とあるIT企業のインフラエンジニア。プライベートでは開発もちょっとやります。
※本ブログの内容はすべて個人の見解であり、所属する企業とは関連ありません。
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【航空安全】JAL安全啓発センターの見学に参加しました
2023/01/29
カンファレンス
お疲れ様です。
しらせです。
タイトルの通り先日、日本航空(以下、JAL)の「安全啓発センター」へ見学に行ってきました。
JALが社員の安全教育のために使っている施設で、一部の時間帯で予約の上一般の方も参加できるようになっています。
コロナ禍で一時休止していましたが昨年末くらいから再開していました。
なぜ何しに行ってきた?内容はどうだったか?を簡単にまとめます。
もくじ
きっかけ
安全啓発センターは、東京モノレールで数十分のところにある「新整備場駅」を出てすぐ横にあるJALの研修施設です。
前述の通りJALグループの社員だけでなく一般の方向けにも公開されている施設になります。
1985年のJAL123便の墜落事故を教訓として、それを風化させることなく安全運航への意識を維持する目的で作られました。
私がこの施設の見学会の存在を知ったのは社会人になってからです。
昔から航空機や航空機事故に興味があったのですが、ふと小耳に挟んだこちらの施設の存在がずっと気になっていました。
123便の当時の状況を自分の目で確かめたいという思いもありつつ、航空機の事故(障害)が非常に少ないことに対する答えが知りたいという気持ちからでした。
航空機自体の故障もあるだろうし、操縦ミスや天候による影響もある。
あってはならない整備ミスの可能性だって100%ゼロにはできない。
これらを加味しても非常に優れた安全性を誇っている点が不思議でなりません。
「再起動をしたら起動しなくなった」
「メンテナスをしたら影響が出てしまった」
「急なシステム障害で影響が出てしまった」
IT業界に従事する身としてこれらの話は非常によく耳にします。
どうやったらより安定してサービスを提供できるか?
これはもしかしたら航空業界と通じるところがあるのではないか?
そう思ったのが本見学に参加を決めたきっかけです。
以下ではあくまでも見学の内容をまとめていますが、次回以降でIT業界と関係しそうな点をまとめていきます。
予約
見学のためにはまずは事前にWebでの予約が必要です。
以下のサイトから予約が可能ですが、非常に人気のため基本的にすべての日程が埋まっています。
ただ、まずはこの関門を突破しないことには次に進めません。
朝、昼休み、業後、寝る前、時間があれば常に空きがないかをチェックしました。
そして年末を挟んで2,3週間経過した頃からぽつぽつと空きが見え始めました。
平日しか枠がありませんので仕事の都合がつくかどうかを確認してから予約しました。
予約時に必要な情報は以下の通りです。
- 会社名または団体名
※個人の場合は「個人」と入力 - 姓、名
- 姓、名(カナ)
- 電話番号
- 来館者情報
※後日入力も可能
予約後に確認URLが記載されたメールが送信されます。
メールに記載のURLにアクセスすることで予約が完了します。
当日は特にリマインドのメールや連絡はありません。
直接会場へ向かいます。
見学内容
非常に残念なのですが建物内は著作権等の関係で撮影や録音がすべて禁止となっています。
内容は基本的にすべてテキストでのご紹介です。
- 場所:「JALメインテナンスセンター1」
- 日時:2023/01/xx 15:00~16:30
2023年1月某日。
東京モノレールの「新整備場駅」に到着しました。
すぐ隣が羽田空港のため離着陸も目の前で見えます。
入館
14:50頃に「JALメインテナンスセンター1」に到着。
敷地内ゲート横の警備員の方から検温を受けてエントランスに向かいます。
建物の入り口では担当の方がお待ちしていて、入館証を受け取って一緒に建物に入ります。
入館後はエレベーターで6階に向かいます。
研修部屋まで同行して頂きながら案内されます。
6階にはリュックサックが入るくらいの大きさの施錠ロッカーが設置されていて荷物などはこちらに保管が可能です。
メインセッション
予定時刻の15時前までには全員入館が終わっていましたので少し早めに開始されました。
1時間半の内容はざっくり以下のようなものでした。
特に印象に残っている4つをピックアップして感じたことを記載します。
- (1) 15:00-15:10 日本航空の主な事故6件についてパネルで説明
- (2) 15:10-15:15 123便事故の概要動画
- (3) 15:15-15:20 事故機の展示物の紹介
- (4) 15:20-15:25 墜落までの飛行経路
- (5) 15:25-15:30 FDRの内容紹介
- (6) 15:30-15:35 圧力隔壁の説明
- (7) 15:35-15:45 原因の説明と動画、事故後の対策説明
- (8) 15:45-15:50 圧力隔壁の実物説明
- (9) 15:50-15:55 事故機の現物や遺品
- (10)15:55-16:00 機内で書かれたメッセージ、乗務員手帳
- (11)16:00-16:05 書物や、資料室の紹介
- (12)16:05-16:30 自由見学
大まかに説明の順番に沿った部屋の順路や展示物の位置関係はこんな感じでした。
(3)事故機の展示物の紹介
事故機の機体の残骸の一部である垂直尾翼やブラックボックス(FDR,CVR)などが展示されています。
空港で見かける飛行機とは似ても似つかない無残な姿に虚しさがこみあげてきます。
(8)圧力隔壁の実物説明
本来の正規な修理とは異なる修理がなされ、結果的に破壊されてしまった圧力隔壁が展示されています。
外見からでは分からない修理であったことが分かります。
これは、、本当に見ただけでは分からないし、この1,2ミリの鉄板の重なりが異なることで大事故につながるという、飛行機の繊細さにも驚きました。
(10)機内で書かれたメッセージ、乗務員手帳
爆発音発生から墜落までに書かれた搭乗者によるメッセージが展示されています。
搭乗されていた方の恐怖と絶望がそのまま伝わってきて本当につらい気持ちになりました。
説明して頂いた社員の方も言葉に詰まりながらの説明でした。
飛行機は地上の乗り物と異なって「緊急停止」ができません。
不測の事態でもなんとか安定させて制御し一刻も早く近くの空港に着陸する。
この特殊な環境は幾度となく飛行機に乗った私でも慣れません。
自由見学
最後の30分弱は自由見学になります。
資料室に入るとJALグループ社員による「安全宣言」が数百枚壁に貼られています。
特に以下の1枚は私が普段仕事で感じていることと近いものを感じてすごく納得しました。
「安全を守るのではなく、安全性の向上を維持する、高い意識で業務に当たる」
なるほど、安全というものはその時々や状況で変わり決まったものではない。
なので、安全性を常に向上させることで安全という基準自体を陳腐化させないように、安全自体をアップグレードしていくという意味だと思いました。
気づき
まずはJAL123便に搭乗されていた方またそのご遺族の皆さまに謹んでお悔やみ申し上げます
そして今回見学させていただいたJAL社と社員の皆さまに心より感謝いたします。
実際に自分の目でみて確かめることで新たな気づきが本当にたくさんありました。
事故の悲惨さ、機体の仕組み、安全に対する考え方など。
そして、今回見学した際に「新提言書 守れ、安全の砦」という2009年に発表された資料が目に留まりました。
(参考)
新提言書 守れ、安全の砦 ~危機のなかでこそ問われる一人ひとりのモチベーション~
こちらは2005年の業務改善命令から4年後に25か所の職場と対話をした内容のまとめとなっています。
こちらにも日本企業風土や組織、コミュニケーションやマニュアルなど、IT業界にも関連しそうな内容がたくさん書かれていました。
まさに「安全の層」を厚くするために、いろいろな角度から物事を見ようという姿勢が伝わりました。
最後になりますが、今回貴重な体験をさせて頂いたJALグループ皆さま、本当にありがとうございました。
以上
おつかれさまでした。